過敏性腸症候群を改善する食事法
過敏性腸症候群は胃腸の機能異常の1つで、5人に1人が悩まされていると言われています。
主な症状は、腹痛や不快感、膨満感、下痢や便秘、胸焼けや吐き気などです。なお、潰瘍や炎症、胃腸組織の肥厚や腫脹、腫瘤などはありません。
過敏性腸症候群は、現在のところ治す薬はありません。過敏性腸症候群に処方される薬はありますが、これは単に症状を緩和するだけで、治すわけではないのです。
しかし、朗報です! オーストラリア・メルボルンのアルフレッド病院の胃腸科部長、モナシュ大学の医学部教授であるピーター・ギブソン医博たちが考案した「フォドマップ制限食」で、過敏性腸症候群が改善することが発表されています。(※1)
フォドマップ(FODMAP)とは、「発酵性・難消化性の糖類」の頭文字を合わせた造語です。
Fermentable(発酵性)…小腸で消化されず、大腸で腸内細菌によって発酵してガスを出す食品。(発酵食品のことではありません)豆類、イモ類。
Oligosaccharides(オリゴ糖)…フラクタン、ガラクトオリゴ糖。
Disaccharides(2糖類)…乳糖、砂糖。
Monosaccharides(単糖類)…果糖、果糖ブドウ糖液糖。
And
Polyols(人工甘味料)…アセスルファムカリウム、アスパルテーム、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、ポリデキストロース、イソマルト。
これらの糖類をできるだけ摂らないことで、過敏性腸症候群の症状が次第に軽減していく というのです。
フラクタンは果糖が多数つながったオリゴ糖で、小麦、豆類、果物に多く含まれています。
<フラクタンが多い食品例>
果 物:桃、白桃、柿、コダチトマト、スイカ、ザクロ、ランブータン
野 菜:タマネギ、青ネギの白部、ニンニク、ニラ、シャロット、西洋アザミ
穀 類:小麦、ライ麦、大麦
豆 類:大豆、大豆プロティン、植物性タンパク、小豆、黒豆、ヒヨコ豆、ヒラマメ
ナッツ:カシューナッツ、ピスタチオ 、アーモンド、ヘーゼルナッツ
飲み物:カモミールティ、フェンネルティ、チッコリーティ
繊維質:小麦フスマ(ブラン)、イヌリン、フラクトオリゴ糖
▶小腸で消化されず、大腸でガスを出す食品
豆類やイモ類に含まれる食物繊維(アミロペクチンC)は、大腸でガスを発生します。
牛乳に含まれる乳糖は、成人の大半が消化できないため、下痢をおこす原因となります。ヨーグルトやチーズは発酵によって乳糖が分解されていますから、下痢にはなりにくいです。
▶体に悪影響を与える糖質
果糖は吸収が悪いため、多量に摂ると下痢になります。血糖値を上げないことで知られるアガベシロップの甘さは、果糖によるものです。
果糖は吸収されてもエネルギーとして使われることはなく、100%肝臓で中性脂肪になってしまいます。そのため、脂肪肝や高脂血症、肥満やメタボリック症候群などの原因となります。
そのうえ果糖は、ブドウ糖の10倍も多くの老化物質(AGEs)を生成します。ですから果糖を多く摂るほど、早く老化します。
果糖は、果物のほか、「果糖ブドウ糖液糖」として多くの清涼飲料水に使われています。
人工甘味料の「アセスルファムカリウム」や「アスパルテーム(商品名:パルスイーツ)」「キシリトール」や「マルチトール」などはすべて糖アルコールで、小腸から吸収されないため血糖値を上げません。吸収されないため身体に悪い影響はないと考えられていますが、実は腸内細菌のバランスを悪化させ、糖代謝の能力も低下させるため、砂糖に比べて2倍も糖尿病になりやすくなることが明らかになっています。(※2)
これらの人工甘味料は、「糖質オフ」を謳った清涼飲料水やビール、ダイエット商品やチョコレートなどに添加されています。
▶胃腸を悪化させる油脂
FODMAP以外に、胃腸を悪化させる油脂に、サラダ油とトランス脂肪があります。
サラダ油に含まれるリノール酸は、胃腸の炎症を悪化させます。酸化すると、より毒性が高くなります。
リノール酸が多い植物油は、紅花油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、グレープシード油、ナタネ油などがあります。
トランス脂肪は細胞毒性がある人工油で、過敏性腸症候群や胃潰瘍や十二指腸潰瘍をはじめ、クローン病や潰瘍性大腸炎、大腸ガンなどの原因にもなります。
トランス脂肪の代表は、マーガリンとショートニングです。プチ容器に入ったミルク状の液体(コーヒーフレッシュなど)もサラダ油から作られたトランス脂肪です。
文献:
※1 “The Complete Low-FODMAP Diet” by Sue Shepherd, PhD & Peter Gibson, MD (The Experiment, LLC)
※2 J. Suez, et al., “Artificial Sweeteners Induce Glucose Intolerance by Altering the Gut Microbiota,” Nature 514, no. 7521(2014 年 10 月 9 日): 181-6.